日本企業の働き方とワークプレイスの方向性~テナント目線、オーナー目線~

ザイマックス不動産総合研究所 石崎

不動産(オフィスマーケット)ワークプレイスの調査・研究を中心に取り組まれている株式会社ザイマックス不動産総合研究所  主任研究員の石崎真弓 氏にお話をうかがいました。
   コロナ後、一時期減少したオフィス面積が増床傾向に転じて出社率が上昇する中、大規模・中規模問わず出社したいと思わせるオフィス作りに取り組むテナント企業が増えていると自社調査結果を踏まえて、石崎氏はお話されました。後半では、ワークプレイスを活性化実現するためのIT投資の傾向(コストから投資への意識)について、ご所見をうかがいました。

ワークプレイス需要にみられる変化

東京23区のマーケットの指標について当社が調査をしておりますが、2024年の第1四半期と第2四半期ともに基本的には大きな変化はありません。
   空室についても、市場の動向は落ち着いた水準を示しており、賃料もほぼ平坦な動きになっています。マーケット的には落ち着いた状況です。東京23区を見ると2023年はオフィスの新規供給量がとても多かった年でした。コロナの影響で空室率が上昇するのではと一時期懸念されており、オフィス面積を大きく減らす企業の動きがマスメディアでも取り上げられました。

2024年春の私共の調査で分かったことですが、オフィスに人が増えたと回答した企業が、減ったと回答した企業を上回っていることが数字に表れました。オフィスの拡張を強く望んでいる企業が増えており、出社率も増えています。

出社率を100%に戻したという企業が増えたわけではありませんが、テレワーク寄りから若干出社する傾向はあります。そういう意味ではコロナ禍後のオフィスの使い方が変わってきていると思います。オフィスのレイアウトを含め、これまでと同じような使い方をせず、三密を避けるようなレイアウトや、何故オフィスに出社するのかという議論もされています。
   単にコミュニケーションの頻度を上げようと社員に強いるのではなく出社したいと思わせる魅力のあるオフィスを作ることで、結果的に出社を促すような取り組む企業が増えています。そういう意味では、人が増えたからオフィスの面積が増えるという従来の構図ではなくなってきています。ABW ※1 をはじめ、多様なワークスペースがオフィスの中に用意されるような取り組みがなされています。

ワークプレイス需要にみられる変化 オフィス運用の難易度があがった

株式会社ザイマックス不動産総合研究所
https://soken.xymax.co.jp/

人的資本経営の観点からも重要だと思うと、約7割が回答していました。採用の強化や人材の維持のため、働き方の施策検討にとどまらず、実際にワークプレイスを用意することが非常に重要視されていると思います。出社率から見ても、ハイブリッドワークを実施している企業と、運用を検討している企業が増えていることが分かります。
   一方でオーナー企業側の取り組みとしては、既にハイブリッドワークを意識しているオーナーと、コロナが終わって出社が戻ると考えているオーナーとの間では意識のギャップがあるように感じます。

大企業や大規模なスペースを所有されているオーナーやデベロッパーは意識が大きく変わっていますが、中規模・個人オーナーはそこまで意識の変化がないように思います。この辺りはテナント企業と比べると、意識の差として幅があるようです。コロナ前は空室率が低かったのですが、その後、新規供給もあり、空室率は上昇に転じました。

最近のオフィスビルにみられるトレンドとしては、貸室フロアーの一部を共有化し、テナント専用のサービスフロアーを作って、その中に会議室や専用個室やカフェ、リフレッシュスペースなどが設置されています。
   専用床の増床だけではなく、シェアオフィス事業者や運営者の利活用を含めた付加価値のあるサービスの提供など、様々な仕組みを取り入れてテナント誘致につなげるサービスが展開されています。大規模商業ビルは特に、そういう時代に入ってきている様子がうかがえます。

今後は既存ビルや中規模ビルであってもそういったサービスフロアーをビル側で取り入れることでテナントが自らの会議室をオフィス内に用意しなくてもよくなると思います。
   商談だけでなく、ちょっとした会議や気分転換で行う一対一のミーティングなど、アドホックに必要となる多様な会議スペースは、共用サービスを使用してくださいとアナウンスできると思いますので、入居する企業はスペースを効率的に借りられるメリットもあります。今後は、そのようなスタイルがある程度定着していくのではないかと想像しています。

次に出社率について継続的な調査からみると、60%から70%程の幅で推移しています。ハイブリッドワークが定着したといえますが、週に3日から4日程度の出社を目指す企業が多くなっています。

ワークプレイス需要にみられる変化 オフィス回帰とハイブリッドワークのバランス

株式会社ザイマックス不動産総合研究所
https://soken.xymax.co.jp/

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著者プロフィール

ザイマックス不動産総合研究所 石崎真弓 様

石崎   真弓(いしざき   まゆみ)

株式会社ザイマックス不動産総合研究所   主任研究員として、不動産(オフィスマーケット)ワークプレイスの調査・研究に従事。

リクルート入社後、リクルートビルマネジメント(RBM)にてオフィスビルの運営管理や海外投資家物件のPM(プロジェクトマネジャー) などに従事。
2000年RBMがザイマックスとして独立後、現在のザイマックス不動産総合研究所に至るまで、オフィスマーケットの調査分析、研究に従事。
近年は、働き方と働く場のテーマに関するさまざまな調査研究、情報発信。

Planonの取り組み

健康的な職場環境の実現

オランダのPlanon本社ビルでは1100名の社員が所属しており、オランダでもまだ数少ないWell認証のプラチナを取得しています。
週に何日か在宅ワークで働いていますが、それでもPlanonは社員に対する快適なオフィスワークの提供が必要だと考えています。社員の健康の向上に、ゲーミフィケーションのアイデアも取り入れています。
   例えば、ジムを使用するときにチェックインするとこれがチケットになり、食堂でサラダを無料でもらうことができます。階段を使う社員の数をセンサーでカウントし、60%パーセントの使用率を超えると金曜日の午後にフリカンデルというオランダ固有のスナックが提供され、 Planonに搭載している様々なソリューションが、仲間と協力してコミュニケーションの場を繋げ「文脈」を形成しています。

地球環境への配慮

Planonではリノベーションの手段を選んでいます。毎年5%、カーボンフットプリントを減らすことをターゲットにしています。
オランダではおもに、エネルギー使用量を暖房に費やします。Planonではガスを一切使わずオール電化ヒートポンプによる空調を使用し、屋上では12万kw/時の太陽光発電を設置しています。換気扇はCO2センサーや利用者をカウントするオキュパンシーセンサーを使い、必要以上の換気を行わずエネルギーの削減に努めています。

インスパイアされるオフィス

Planonでは従業員同士がインスパイアしてパフォーマンスを高めようという考え方を取り入れています。
ジュードボールというゲームをする場所、あるいは家庭菜園や世界各地から植物を集めたグリーンハウスになっている食堂もあります。 金曜日の午後には食堂の一画をビーチバーとして利用し、メンバーと一緒に飲食を楽しむスペースとして活用しています。

コネクトインのアイデア

Planonでは従業員、お客様、パートナー、学生、スタートアップ企業、それらを繋げるアイデアを、オフィスの中に取り入れています。
オフィスの中にイノベーションラボを作り、ハイブリッドワークの中でも特にコミュニケーションするということを中心にしたオフィス作りにを取り組んでいます。
   もちろん、これらのコミュニケーションスペースは前述のインスパイアする場所も含めて、予約できるようにしてします。ハイブリッドワーク下においても、あえてそこに集まろうという行動を誘発しています。

製品紹介

Planon IWMS

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豊富な標準データモデルから選択
ノーコーディングで機能構成
維持管理・運営コストの削減

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