人間科学からみた日本のワークプレイスの未来~新しいオフィスデザインとは~

名古屋市立大学 佐藤
ワーカーの『主観』の集合から考えるワークプレイス

私は、ワークプレイスをワーカー(個人)の「主観」の集合と捉えています。環境は個人の「主観」を通して捉えられるわけですが、この主観が段々と重なり、定着していくことを私は「文脈」と表現しています。この「文脈」が形成されることで社会的環境(ワークプレイス)となるという考えです。
   図書館の自習室などは、子どもの頃から「ここは喋ってはいけない場所だ」という認識が定着していることで静かな環境が作り出されています。反対に、オフィス内のリフレッシュスペースがうまく使われない企業では、活用のイメージが定着していない(文脈がない)ケースが多いです。
   こうした“カオスな”ニーズを追いかけることは合理的でなく、従来の日本的な、トップダウンによる意思決定とは異なる形で、社員同士の議論、合意形成によって「自分たちのオフィス」についての「文脈」をボトムアップ型で創り上げていくことが重要だと考えています。

ワーカーの『主観』の集合から考えるワークプレイス

シン・ワークプレイス・デザイン連続ゼミナール講演資料から抜粋

多様な視点から読み解くワークプレイス

そのために、日本における「文脈の構築」と「教育・人材育成」を本質的に見直す必要があると考えて、研究室活動を展開しています。
   「文脈の構築」の観点では、組織内の情報共有促進についての研究や、プロジェクトワークの様々な場面において対面とリモートのどちらが好ましいかを調べた大規模アンケートなど、企業がつながりを維持し、適切に文脈を構築していけるオフィスのあり方や働き方について研究を進めています。
   「教育・人材育成」の観点では、ボトムアップ型の議論や合意形成ができる人材育成を目指して、大学における産学・地域連携活動を通した「学びの場」の構築についての研究や、認知科学系の研究者との共同で大学生のグループワークでの議論の展開について、微視的な行動観察などを進めています。

多様な視点から読み解くワークプレイス

シン・ワークプレイス・デザイン連続ゼミナール講演資料から抜粋

「正しいオフィス」というステレオタイプからワークプレイス・ワークスタイルを創造する立場へ変わる

ビジネスの変化の速度はどんどん加速しており、オフィスづくりを支える様々な技術の革新も目覚ましいです。そんな中で、「正しいオフィス」というステレオタイプはなくなりつつあります。オフィスは設計者に任せて“つくってもらう”ものでなく、企業や社員ひとりひとりが“創造する”ものになってきており、オフィスづくりは「従業員の行動・意識変容のきっかけ」になり得ます。
   去年、高校のキャリア支援の一環として依頼を受けたフリースペースの改修で、生徒さんたちとのワークショップなどを重ねて、参加してくれた生徒さんの想いに近い場所にリニューアルすることができた事例があります。生徒さんも「自分たちの想いが反映された場ができた」と、とても喜んでくれて、完成イベントでも素敵な笑顔を見ることができました。
   オフィスづくりも同じで、想いが形になるのは大事なことです。自分たちのオフィスや働き方に関心を持ってもらう重要な機会ですし、会社は自分たちの声に耳を傾けてくれる、大切に考えてくれている、という実感を持ってもらえるかどうか、会社の姿勢を示すチャンスです。それらが伝わらない状況下では、従業員がモチベーション高く、能動的に取り組むようにはならないと考えています。

IWMSの可能性・期待すること

「統合的な管理システム」は「スペースの有効活用、手続き等の無駄の削減、コスト削減」などをもたらし、さらには「リソースの有効配分 ⇒ 効率性・エンゲージメントの向上」を介して「創造性」を高める可能性もあるため、大変大きなメリットを生み出すポテンシャルがあると考えています。
   ただ、「システムの最適化や健康経営」は、あくまで効率性の向上を主にもたらすものであり、今日お話しさせていただいたように、「創造性の向上」は社員自身のクオリティや社内外の交流や情報収集など、さまざまな要因が複合的に絡んでもたらされるものです。
   「生産性」は「創造性」と「効率性」にきちんと分けて評価すべきで、効率性中心の改善を「生産性向上」とすることで「=創造性も上がりますよ」という見せ方をしているケースも多い点は、ちょっと気になっており、注意したいところです。

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著者プロフィール

名古屋市立大学 佐藤 泰 様

佐藤   泰(さとう   たい)

名古屋市⽴⼤学 ⼤学院芸術⼯学研究科 建築都市領域 講師/博⼠ (⼈間科学)

早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了  博士(人間科学)
日本建築学会ワークプレイス小委員会・主査 (2022年度〜)
日本オフィス学会 学会誌委員⻑ (2023年度〜)
2020年度日本建築学会東海賞 (論文賞) 受賞

建築・都市空間の利用者である「ひと」の実態調査をもとにした「はたらく場」「はたらき方」の研究を中心に取り組まれており、「ひと」への関心から教育・保育施設の「学びの場」の研究も展開。

Planonの取り組み

健康的な職場環境の実現

オランダのPlanon本社ビルでは1100名の社員が所属しており、オランダでもまだ数少ないWell認証のプラチナを取得しています。
週に何日か在宅ワークで働いていますが、それでもPlanonは社員に対する快適なオフィスワークの提供が必要だと考えています。社員の健康の向上に、ゲーミフィケーションのアイデアも取り入れています。
   例えば、ジムを使用するときにチェックインするとこれがチケットになり、食堂でサラダを無料でもらうことができます。階段を使う社員の数をセンサーでカウントし、60%パーセントの使用率を超えると金曜日の午後にフリカンデルというオランダ固有のスナックが提供され、 Planonに搭載している様々なソリューションが、仲間と協力してコミュニケーションの場を繋げ「文脈」を形成しています。

地球環境への配慮

Planonではリノベーションの手段を選んでいます。毎年5%、カーボンフットプリントを減らすことをターゲットにしています。
オランダではおもに、エネルギー使用量を暖房に費やします。Planonではガスを一切使わずオール電化ヒートポンプによる空調を使用し、屋上では12万kw/時の太陽光発電を設置しています。換気扇はCO2センサーや利用者をカウントするオキュパンシーセンサーを使い、必要以上の換気を行わずエネルギーの削減に努めています。

インスパイアされるオフィス

Planonでは従業員同士がインスパイアしてパフォーマンスを高めようという考え方を取り入れています。
ジュードボールというゲームをする場所、あるいは家庭菜園や世界各地から植物を集めたグリーンハウスになっている食堂もあります。 金曜日の午後には食堂の一画をビーチバーとして利用し、メンバーと一緒に飲食を楽しむスペースとして活用しています。

コネクトインのアイデア

Planonでは従業員、お客様、パートナー、学生、スタートアップ企業、それらを繋げるアイデアを、オフィスの中に取り入れています。
オフィスの中にイノベーションラボを作り、ハイブリッドワークの中でも特にコミュニケーションするということを中心にしたオフィス作りにを取り組んでいます。
   もちろん、これらのコミュニケーションスペースは前述のインスパイアする場所も含めて、予約できるようにしてします。ハイブリッドワーク下においても、あえてそこに集まろうという行動を誘発しています。

製品紹介

Planon IWMS

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豊富な標準データモデルから選択
ノーコーディングで機能構成
維持管理・運営コストの削減

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