2024年3月28日に東京・コンファレンススクエアエムプラスで「Future of Workplace in Japan」(FWJ)のテーマ”グローバルスタンダードなIWMSが日本にもたらす変革とは?”をテーマに、ラウンドテーブルディスカッションを開催しました。
基調講演では、Planon創設者 ピエール ギュレン 氏、Chief Executive Officer (CEO) ピーター アンカースチャーナー 氏にご登壇いただき、世界的なマーケットトレンドの動向と、FMシステムと日本のマーケットにどのように取り組んでいくのか、お話いただきました。
ピーター アンカー スチャーナー(Peter Ankerstjerne)と申します。本日はこのような機会をいただきありがとうございます。
私は国際ファシリティマネジメント協会(IFMA)のチェアマンとして働いていますので、日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)ともやり取りしていた経緯があり、日本とは親しみがあります。
本日の講演では、世界的なトレンドがどうなっているのか。何故、FMシステムと日本の市場にどのように取り組んでいくのかをお伝えしたいと思います。
Planonはスマートサステナビリティ管理のエコシステムをリードしている会社として自負しています。左上の四象限で表されており、PlanonはVerdantixやGartnerなど、第三者機関から評価をされています。左下は事業収益の推移を表していますが、Planonの3~5年は非常に成長していることがわかります。
当社は、プラットフォームに多くの投資をしており、グローバルマーケットを広げるために取り組んでいます。
右側の図はPlanonが世界的に展開しているオフィスの拠点を示しています。最近は、オーストラリア(シドニー)・イスラエル(テルアビブ)・ニュージーランド(オークランド)まで事業を拡大しています。
まず、ファシリティマネジメントの市場は3つの分野があると思っています。企業不動産関連、商業不動産関連、住居関連があり、Planonは現在、企業不動産関連、商業不動産関連に注力しています。 今後の市場予測ですが、世界的に注目されているテーマとして、環境、ガバナンス、サステナビリティがあります。Planonは、将来のワークプレイスについて、従業員に対してどのような空間を提供していけるのかに注力しています。また、BIMを使って様々な情報を紐づけてデジタルツインを実現する必要があると考えております。同時に、法律、政府から要求されている規制に準拠するようなサービスの提供に取り組んでいます。
スマートビルにおけるソフトウェア市場の占有率を見ると、不動産ポートフォリオ管理が30%、残りの約60%は不動産以外の分野が成長しています。成長している分野としては、スペース&ワークプレイス管理、サステビリティ、エネルギーの効率性の分野です。
施設管理の分野も成長しており、不動産5%の成長に対してメンテナンス管理も年間10%の割合を占めています。
市場全体を見ると北米が成長しており、ヨーロッパも同様です。アジアも15%程成長しており、その中でもシンガポールと香港が著しい成長を見せています。将来的には日本も成長する市場だと我々は考えています。
何故、日本のマーケットが伸びるのかというと、理由は3つあります。
1つ目は、高齢化による高度技術の人材不足、経験を積んだ人材獲得の争奪戦、ノウハウのデジタル化、DXの必要性、これらの観点でニーズがあると考えたからです。
2つ目は、日本はテクノロジーを受け入れる取り組みに特化している印象を受けました。来日して素晴らしいと感じたことは、日本ではテクノロジーが身近な存在であり、適用する土台があるということです。ワークプレイスに取り入れられていない部分がありますが、日本の様々な場所で利用されているテクノロジーをビジネスの環境に適用することで、シフトできる要素があると考えています。
3つ目は、あらゆる面でコスト削減効果を示せる点です。
統合されたプラットフォームで建物の維持管理を行うことによって、20~30%のITコスト削減効果が期待できます。
当社としては、3つの市場で事業内容に合わせたサービスを展開しています。1つ目はビルオーナー、2つ目が管理会社、3つ目はサービスプロバイダーです。スライドの右側は、市場に対しての3つの事業内容を示しています。
Planonを利用することで、シュナイダー、日立、三菱などがPlanonに接続して様々なデータ連携、分析してスマートビルを実現するエコシステムの構築が可能です。
SAP社とは不動産、および施設管理のための統合ソリューション「Planon Real Estate Management for SAP S/4HANA」の提供を目的に、戦略的パートナーシップを発表しました。
SAP社とPlanonの連携を実現し、一つのシステムに統合して利用できるようになりました。建物のデータを抽出し、連携することでスマートビジネス、サステナブルビルを実現します。
ここからはPlanonでどのような事が出来るかご紹介します。Planonは、自国だけではなく世界で利用できるクラウド型のプラットフォームです。
Planonを利用することで、不動産管理、ワークプレイス管理、アセット管理、エネルギー管理を一つのデータソースに統合されコンフィグレーションして利用できることが特徴です。
ワークプレイスを取り上げてみると、コロナを境に働き方が変わり、センサーを使って建物をどのように管理していくか把握するきっかけができました。
香港を例にあげると、統合したデータを用いて、建物が30%しか活用されていないことが判明しました。このデータは、5年後に替えるべきか検討する指標となりました。データを収集して解析することはとても有効でした。スマートビルは新しい建物だけではなく、従来の建物でも実現可能です。
例えばセンサーチップをテーブルの下に取り付けて温度を感知し、会議室の使用可否を色で識別することができます。それらを活用することで、新しい建物・既存の建物に限らず、スマートビルが実現できます。
コロナを境にヨーロッパでもオフィスでの働き方が変わりました。今では、誰が、どの会議室を使用して、どのぐらいの人数がいるか把握できるようになりました。利用状況が把握できることで働き方にあった適切なオフィススペースの検討や、ファシリティコストの最適化に繋がります。Planonでは、デスクや会議室の使用状況を色分けして識別できます。緑は未使用、赤は使用済みなど、一目で確認できます。
一つ例をあげると、ヨーロッパではホテルの予約状況を確認するかのように、オフィスを利用する取り組みがされています。ワークプレイスマネジメントはホテルマネジメントと言えると思っています。
ヨーロッパは環境に関する規制が厳しくなっているため、2025年までにCO2に関するレポートを提出することが法律で義務付けられています。IoTを利用してエネルギーの使用状況を、リアルタイムにグラフで確認し、分析できます。エネルギー消費量の状況を需要と供給を計りながら、建物の温度が上昇している原因を探ることもできます。
アジアはヨーロッパよりBIMの取り組みが進んでいると感じています。BIMは建築設計・施工に留まらず、施設管理の段階まで利用されています。BIMを利用することで、建物や設備のどこに問題があるのか特定しやすくなりますし、メンテナンスや修理を効率よく行えます。
建物や設備からデータを取得することで、スマートビルの様々なシーンで利用できます。ヨーロッパでは効率的にビジネスを展開するための判断材料として役立てています。データを確認することで、会議室・オフィス・エアコンなどの使用状況が把握できます。これは、従業員にとって行きたい場所が特定しやすくなり、自分が働く場所をポジティブにとらえてもらうえることでしょう。
世界ではハイブリッドワークプレイスが増えています。働きやすい場所がどこなのかを従業員が確認しやすくするため、例えばホテルの格付けのようにワークプレイスを星付けしてクオリティレベルを示すような活用の仕方も考えられます。
清掃についても同じような事が言えます。例えば、トイレの扉にセンサーを付けて1000回開閉されたら清掃する、デスクにセンサーが設置されている場所だけ清掃する、モバイル端末で清掃対象を確認するなど、清掃計画に役立ちます。
スマートビルの具体的なシーンについてですが、設備機器を制御する装置や、センサーを介してデータを取集し、AIに分析させることで設備の故障や部品交換などの必要が発生した箇所を、いつ・何を修理・交換を行うか、保全計画を立てることができます。Planonでは、積極的にAIを利用したスマートビルディングの実現に取り組んでいます。
人が決断する際にはいくつかの過程がありますが、AIが選択肢を示して人間が決定します。例えば電気自動車を充電するとAIが検知して充電が終わったことを知らせてくれるようになるでしょう。
Planonでは、操作画面の右側にヘルプデスクのようなアシスタント機能があります。今までは問題を解決するために自分で調べる必要がありましたが、今後は、問題発生の箇所をAIが自動的に検知して、解決に導いてくれるような開発をすすめています。
現在は、KPIの指標やグラフなどを確認しながら試行錯誤して検討をすすめていますが、将来的にはそのようなシステムは不要になって、インターフェースが変わると考えています。例えば、自分が体調を崩したとしても、AIに問いかけると建物を最適な状態に維持管理をサポートしてくれる未来が訪れるでしょう。
AIを使うことで、過去のデータを分析して予見できるようになるのです。
こちらはPlanonのオフィスです。ご覧の通りジャングルのようなオフィスになっています。この取り組みは、コロナの影響で在宅勤務の機会が増えたことがきっかけでした。いかにしてオフィスに来てもらうか、従業員にうったえかける活動に取り組んでいます。
ジャングルのような場所を作ったり、バーやジムなどをもうけることで、出社したくなるような魅力的で、様々な人が集まるオフィスの環境作りに取り組んでいます。
今後、ワークプレイスの管理に取り組むことはホテル管理と同じように、従業員に対して付加価値のある環境を提供することが大切になると考えています。
基調講演終了後のラウンドテーブルディスカッションでは、Planon社への質疑、参加者同士の議論を交わす場面が多数ありました。後半の懇親会では、登壇者や参加者が直接交流し、ネットワーキングを深める場となりました。イベントは盛況の内に終了しました。
今後も、お役立ていただけるようなイベントの企画、情報発信を行ってまいります。